暴行罪は、侮辱罪よりずっと簡単です

職場での暴行の記録 刑事編 3

私は誹謗中傷(侮辱罪)でも刑事をやりましたが、手間がまったく違いました。

違いは、ほとんど一点に集約されます。侮辱罪は親告罪で、暴行罪は非親告罪だということです。

用語

親告罪 / 非親告罪

親告罪は、被害者が告訴しないと起訴できない罪です。侮辱罪はこちらなので、告訴状を自分で書いて出す必要があります。

非親告罪は、告訴がなくても捜査され、起訴されうる罪です。暴行罪はこちらなので、告訴状は要りません。

告訴と被害届も別物です。告訴は「処罰してほしい」という意思表示、被害届は「こういう被害を受けました」という届出で、被害届に処罰を求める効力はありません。

ここから、残りの違いが全部出てきます。

侮辱罪(親告罪) 暴行罪(非親告罪)
告訴状 自分で作って、何度も持っていった 要らない
罪の要件の判断 公然性・特定性を自分で検討する 考えなくていい
犯人 誰か分からない(そこから始まる) 目の前にいる

私がやったのは「110番する」「被害届を出す」「厳罰を望みますと言う」の3つだけです。

誹謗中傷のほうは、この前に要件の検討と告訴状の作成が丸ごと乗っていました。 (→ 誹謗中傷の記録)

警察の最初のひとことが、まったく違いました

同じ人間が、2件の刑事事件を自分で警察に持ち込んでいます。 そして、入り口の難しさがまったく違いました。

誹謗中傷(侮辱罪) 職場での暴行
最初の接点 自分で警察署に行った その場で110番した
警察が来たか 来ない。こちらが出向く 約1時間後に現場へ来た(現場検証)
書類の言い出し 自分から告訴状を持参 翌日、警察から「被害届を出しますか」
受理まで 一度は受け取ってもらえなかった 2日後に提出して終わり
提出後 2週間に1回、こちらから電話 何もしていない。待つだけ
結果 科料9,900円(略式命令) 罰金10万円(略式命令)

同じ警察の、最初のひとことがこれです。

警察官A告訴状が弱い

警察官A被害届を出しますか

ここが差でした

誰が最初に事件を認識したか

暴行の件では、警察が自分の目で現場を見ています。誹謗中傷の件では、事件があったことを知っているのは私だけでした。

これは私の実感です。事件の重さの差ではありませんでした。罰金10万円と科料9,900円で、刑としてはどちらも軽いほうです。

ただし、法律上そうだというだけです

被害者が何も言わなければ、警察が自分から立件することは、実際にはまずありません。

被害届は、被害者が「捜査してほしい」と伝えるための、いちばん普通の手段です。 口頭で届け出れば、警察官が聴き取りながら書類を作ります。

迷って通報しなかった人を、何人か見てきました

私が見てきた範囲では、大抵、後から後悔していました。

理由は単純で、あとからやろうとしても、もう証拠がないからです。

時間が経ってから「実はあのとき殴られた」と言い出しても、 「そんな事実はなかった」と言われたら、それまでです。目撃者の記憶も薄れます。

私にとって、その場で110番したことの意味は、処罰ではありませんでした。証拠を作ることでした。

警察が来て、現場検証をして、記録が残る。この記録が、何年もあとまで効き続けました。